三振前のバカ当たり

自営業30代男性が、本の話題を中心に、学んだことや考えたことを書き残していきます。

「これからは、豊かな地方が大都市部の人口を吸い上げる時代となる」 新刊新書書評「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」(講談社現代新書) 河合雅史著

 新書版

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

 

 

kindle版 

 

内容(「BOOK」データベースより)

2035年、首都圏も高齢者が激増!「日本を救う処方箋」も本書で提言。

 

 

 

 

● 「少子高齢化」が一番ヤバい

 これはヤバいなあ……。

共謀罪ブラック企業北朝鮮と世の中いろいろあるけれど、一番ヤバいのは少子高齢化で、この問題を放っておくとマジで日本は壊滅するよ、ということを改めてつきつけてくる一冊だった。

 

 

この本では、「人口減少カレンダー」として、少子高齢化が進んで「高齢化による医療・介護の負担増」と、「少子化による人手不足」が深刻化する中でどのような変化が起こるのかを年表という形で紹介していく。

こんな感じで。

 

 2017年 「おばあちゃん大国」に変化
2018年 国立大学が倒産の危機へ
2019年 IT技術者が不足し始め、技術大国の地位揺らぐ
2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
2021年 介護離職が大量発生する
2022年 「ひとり暮らし社会」が本格化する
2023年 企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる
2024年 3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国」へ
2025年 ついに東京都も人口減少へ
2026年 認知症患者が700万人規模に
2027年 輸血用血液が不足する
2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
2033年 全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる      ほか……

 

 

もう既に、日本は「おばあちゃん大国」になっているんだって。

2015年に高齢者(=65歳以上)が1/4を超えていて、女性に至っては3人に1人が高齢者になっているそうだ。

確かに、おばあさん多いよなあ。

たまにある平日休みにすいていることを期待して美術館行くと、おばあさんが山ほどいたりすることがあるからね。

 

 

 

 

● 「当たり前」が壊れていく社会

この年表、全体の半分くらいはどこかで聞いた記憶のある話だった。

だから退屈というわけではなくて、いちいち客観的なデータを用いて説明してくるから説得力があっていちいち未来が怖くなってしまう。

その一方で、初めて気づかされる事実にもいくつか出会えた。

例えば「2027年 輸血用血液が不足する」。

現在、輸血用血液の85%が50代以上の患者に使っている一方で、献血をする人の76%が50歳未満という状況らしい。

輸血用血液はほとんどががん・心臓病・白血病といった病気の治療に使われていて、高齢化社会を迎える将来、当然血は今よりもたくさん必要になっていく。

需要が増える一方で、供給する側の若い人たちがどんどん減っていく。

そうすると当然、血が足りなくなる。

2027年には86万人分の血液が足りなくなる計算らしいのだ。

そして少子化が進めば病院も人手不足に陥り、まともな医療を提供できることすら怪しくなってくる。

「病院に行けば助かる」というこれまでの常識が通用しなくなるかもしれないということである。(中略)少子高齢化とは、これまで「当たり前」と思ってきた日常が、少しずつ、気づかぬうちに崩壊していくことなのである

 

医療だけじゃなくて、現在老朽化が進んでいる道路や水道といったインフラ整備も人手不足や今後予測される税収減によってまともに工事を進められなくなってしまう。

当たり前の崩壊、恐ろしすぎる……。

献血は昔よく行っていて、お菓子やジュースの食べ・飲み放題、場所によってはミスドハーゲンダッツまで食べられるという贅沢な思いができた。

ここまでサービスしなければいけないほど危機的な状況が迫っているということが今回よくわかった。

 

 

 

● 東京は「オワコン化」する?

そしてもう一つ、恥ずかしながら全く知らず、知って大きなショックを受けた事実があった。

それが、「東京の高齢化」。

私は都民なんだけど、東京はなんだかんだいって(15年前の私がそうだったように)若者が地方から引っ越してくるから高齢化はそこまでひどくはならないだろう、なんて漠然と考えていた。

甘かったみたいですね。

どうやら未来の東京は、ビジネスの街から高齢者の街へと変わってしまうようなのだ。

既に生産年齢人口(15~64歳)は減っている。

その一方で、地方暮らしの80代の親が東京に住む子どもの世話になるために上京するケースが増えている。

そして高齢化が深刻化するのが2042年、団塊ジュニア世代が全員65歳を迎えてからだ(もちろん東京だけじゃなく、日本全体が)。

2045年、東京の3人に1人が高齢者になる(私も61歳、一歩手前!)。

特に23区は、家の広い郊外より通勤に便利な都心に住む人の多い世代が高齢化するため、高齢化率40%の自治体ばかりになってしまう。

渋谷も原宿もみんな巣鴨化するかもしれない。

そして何より深刻なのは、既に高齢者だらけの地方に比べて、東京はビジネス中心の街作りをしてきたせいで介護が必要な高齢者用のベッドが全く足りてないということ。

「老後も東京圏に住み続けるのは、介護難民に陥るリスクを覚悟するようなもの」なんだそうです。

逆に地方は、既に高齢者が多い上に、将来も高齢者の数はさほど増えない。

だから高齢化問題というのは深刻にはならない。

介護サービスもちゃんと受けられる。

そうすると若い世代の人たちは、年寄りばかりでつまらない、負担も増え続ける都会に見切りをつけて、地方へとどんどん移住していくかもしれない。

高齢者だって介護が充実している地方に移り住みたくなるだろう。

東京一極集中と言われているけれど、もしかしたら30年後にはほっといてもこの現象は終わるのかもしれない。

 

 

 

● 本書を読んで考えたこと

本書では、問題解決策としてどのような政策をとるべきか、著者の案が紹介されている。

それを読みながらも、私はもっとミクロレベルで、今後の振る舞い方を考えられずにはいられなかった。

結婚もしてある程度貯金もあって、そろそろ家を買いたいなんて思ってたけれど、老後のことを考えると身軽に移住できる賃貸のままでいたほうがいいんだろうか。

東京も人口が減っていくのなら家を売るのも難しそうだし。

それから、久しぶりに献血に行こうかな。

お気楽な予測で申し訳ないけれど、血液不足が深刻になるのであれば、献血で受けられるサービスはハーゲンダッツどころはなくなるかもしれない。

 

 

 

読む最中はしんどかったけれど、目を背けてはいけない事実ばかり。

本書の内容を前提にして、自分や社会の未来を考えていかないと。

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