三振前のバカ当たり

自営業30代男性が、本の話題を中心に、学んだことや考えたことを書き残していきます。

AKBと新書「AKB選抜総選挙で須藤凜々花が結婚報告」

NMB48の須藤凜々花(20)がスピーチでまさかの結婚宣言を行った。自己最高位の20位にランクインし「総選挙期間、皆さんの愛に触れてとっても楽しかった」と感謝。「みなさんに囲まれて人の愛について知って…」と話すと、急に「初めて人を好きになりました」と告白。そして「私、私…。NMB48の須藤凜々花は結婚します」と宣言した。

須藤凜々花 掟破りの結婚宣言…ファンの批判殺到「裏切られた」― スポニチ Sponichi Annex 芸能

 

 

知っているメンバーがほとんどグループから抜け、最近の曲も全然知らず、もうAKB48に対する興味をほとんど失ってしまっていたけど、今回投げ落とされたとんでもない爆弾のおかげで、久々にAKBのことを考える機会ができた。

 

結婚報告ってすごいね。

恋愛発覚してグループを抜けたり罰を受けたメンバーはいるけれど、結婚します! ってTVの前で言い切ってしまえばもう周囲は尊重するしかなくなる。

恋愛禁止の掟を破ったから罰則を与える、というのと、結婚するから罰則を与える、というのとでは違うよね。

前者はまだ納得できる余地がなくもないけど、後者は人権侵害の響きが強くなってイメージが悪くなるだろうから(まあ、どうせ結婚を機に脱退するんだろうけど)。

今回の事件で、久々にAKBが世間から注目されることになりそう。

 

 

 

●そもそもどうして、恋愛は禁止なの?

数年前に、指原莉乃が過去の交際発覚でHKT48に「左遷」されるという事件があった。

私は格別AKBに思い入れはないし、アイドルを応援する趣味もないので、ファンたちの気持ちはわからなかった。

だから、恋愛禁止なんておかしいだろ、と思ってた。

 

 

新書版

AKB48白熱論争 (幻冬舎新書)

AKB48白熱論争 (幻冬舎新書)

 

 

 kindle

AKB48白熱論争 (幻冬舎新書)

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この本が出たのは、ちょうど指原の一件があった数ヶ月後。

本書では、AKBの恋愛禁止ルールを明確に肯定している。

 

 

15歳の女の子が持っている最大の能力は何か。それは「恋愛能力」だろうと思うんです。何もできない10代の少女でも、恋愛だけは誰とでもできる。どんなに地位の高い相手とも、恋愛はできる可能性があるんですね。でも、秋元康はその力を封印しろと言う。メフィストフェレスみたいに「おまえがアイドルになりたいなら、その力を俺に預けろ」と交換条件を出しているわけです。

小林 それが結局、CDを箱買いしてでも選挙の投票権を手に入れることにつながってるんだもんな。あれはお布施みたいなものだよ。

中森 そうそう。お布施だと思えばいいんです。信仰ですから。

小林 そう考えると、投票数が信仰の度合いを表すことになるよね。中森さんは今回、評論家として体験するために1票だけ入れたわけでしょ? 宇野さんは玲奈に6票だけど、それでもまだ評論家としてのクールさがある。わしはCDを10枚買ってしまった時点で、異常な世界に踏み込んでしまった感覚があったよ(笑)。ふつうなら、CD2枚買ったら無駄なことをしていると思うわけだから。しかし年甲斐もなく、信仰の領域に片脚を突っ込んでしまった。でも濱野さんは58枚もCDを買ったわけでしょ? もう、ふつうじゃないよな。

濱野 僕も、ついに戻れない世界に足を踏み入れたなと思いますね。

中森 宇野さんはまだAKBの「宗教学者」だけど、ハマノン(濱野)はもう「神学者」ですよ。そこには大きな違いがある。もはや、信仰。冷静さがないもん。

小林 でも、わしは「負けた」と思うわけよ(笑)。やっぱり、芸能人の基本は巫女だからね。そこに神が乗り移ったときに、カリスマ性が生まれる。それがアイドルとしての「才能」なわけでしょ? 彼女たちが巫女になろうとしている以上、恋愛禁止は仕方ないよ。大衆化すればするほど、巫女を見る目は厳しくなっていく。だから、お布施としての票はどんどん増えていくのが当たり前。まったく批判されるようなものじゃないね 

 

 

巫女がみんな処女、というのは誤解らしいけれど、それはともかく。

ファン側の理屈としては、 特定の「誰か」ではなくて推してくれる人みんなの「信仰対象」であってくれるからこそ、自分の信仰心を表明するために同じCDを大量に買ってせっせと投票している、と。

そう考えると、ファンでさえ「戻れない世界に足を踏み入れた」と自覚するような異常な消費活動を強いることでお金を稼いでいる以上、特定の男に愛を注ぐというのは道義的に許されない、というのは確かに理解できる。

 

 

 

● タブーが破られたその後

でもその一方で、こんなことも言っている。

 

 

 しかしタブーは破られることに意味があるんですよ。たとえばカトリックの戒律も、厳しすぎて守れない。よく言われるたとえだけど、お盆に水を張って歩けば、必ず水はこぼれる。でも、こぼれた水は懺悔によってすべてカトリックというタンクに回収されるんだと。つまり、タブーを破らないことではなく、タブーを破って懺悔することを通じて、カトリックは強化されるわけ。AKBも同じで、タブーを破ってクビになる奴もいれば、さしこのように左遷される奴もいるけど、そこで懺悔することによって、神話がより強化されるんですね。

濱野 なるほど。不倫もセフレも同性愛も何でもアリの世の中で、唯一フィクションとしての絶対的恋愛を用意しているのがAKBだと

 

 

 指原、恋愛スキャンダルの際に丸刈りになった峰岸みなみにとって、スキャンダルを経験したことがそれぞれを語る上で欠かせないストーリーとなっている。

数年前に起こった傷害事件ですら、AKBグループは上手く利用した印象がある。

ただ、今回の場合はどうなるんだろう。

結婚だからね。

彼女のアイドルとしてのストーリーはおそらくここで終わるだろうから生かしようがない。

何かの伏線になるのではなくて、ここがクライマックス。

そしてグループ全体が、この事件をどう「利用」していくのか、それが読めない。

だからこそ、この騒動がどんな顛末を迎えるのか、しばらくの間注目してみよう。

 

 

 

● これがAKBか!

最後に、この本で最も印象に残った箇所を引用してみる。

この箇所を読んで、大の大人がアイドルにはまる理由がよくわかりました。

こんなエピソードがあるのなら、そりゃ恋愛してたら怒りますよね。

 

 濱野 個人的な経験で言うと、6月3日の握手会のとき、まりやぎ(永尾まりや)という僕の二推しのメンバーに握手しに行ったんです。そのとき、「永尾まりや」とデカデカと書いてある推しマフラータオルというファングッズがありまして、それを首にかけて行ったんですよ。そうしたら本人が「私のタオルだー! ありがとう!」とか言いながら、ギュッギュッて引っ張ってきて(笑)。もうこっちとしては一瞬何が起こったのかわからなくて。それがめっちゃくちゃヤバイくらい可愛いんですよ……自分が推しているメンバーの「重力」を感じることなんて普通はないわけじゃないですか……。その瞬間に「10票買い足そう」と思って投票したんです。

中森 宿命だよ!

濱野 そう、ほんとこういうなんてことのないエピソードが、運命に感じられるのがAKBなんですよね。で、昨日(総選挙)ではなかなかまりやぎの名前が呼ばれなかったんですよ。速報では53位だったんですけど、全然呼ばれないから、「もうダメだ、落ちた」と思っていたんです。でも、速報のときよりもだいぶ順位の高い39位にランクインしたので、もうその瞬間「まりやぎキター!」って声を出したら、声が裏返って喉がおかしくなってしまいました(笑)。いま僕が考えているのは、早く来週末にある握手会にも行って、「よかったね。俺、10票買い足したよ」とか言って、「本当!? ありがとう!」とか言われてこの喜びをまりやぎと噛みしめたい。

小林 何なんや、こいつは(笑)

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