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「外国人を受け入れずに自国民だけで人口を増やしている先進国は、世界には残念ながら見当たらない」 新刊新書書評「限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択」(朝日新書) 毛受敏浩著

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限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択 (朝日新書)

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限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択 (朝日新書)

限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択 (朝日新書)

 

 

 

内容(「BOOK」データベースより)

すでに介護・農漁業・工業分野は人手不足に陥っている。やがて4000万人が減って地方は消滅をむかえ、若者はいい仕事を探して海外移民を目指す時代となるだろう。すでに遅いと言われるが、ドイツ、カナダなどをヒントに丁寧な移民受け入れ政策をとれば、まだなんとか間に合う。

 

 

 

 

● まずは要約から

もし「本書の要点を十文字以内でまとめろ」と求められたとしたら。

答えは簡単、読んだ人なら誰にでもできる。

答えはこれ。

「移民を受け入れろ!」

これからの日本は人口がどんどん減っていって、将来「限界集落」どころか日本全体が「限界国家」となってしまう。
そうなる前に移民を積極的に受け入れて人口減少に歯止めをかけましょう。
これが本書が伝えたいメッセージだ。

だけど、移民、という言葉を聞くと、どうしてもネガティブな印象が浮かんできてしまう。
「価値観の違いでトラブルが多発するんじゃないか。島国で海外との交流が希薄な日本は、移民は向かないのではないか」

という不安がある。

他にも、
「仕事を奪われるんじゃないか」
「日本が乗っ取られる」
「ヨーロッパは移民が増えて混乱しているじゃないか」
という反対意見も聞く。
そんな我々の心配をなくすために、著者は様々な実例や他国との比較を通して、移民が増えても日本は混乱しないことを丁寧に説明する。

 

 

 

● そもそも、「移民」って何?

その前に、現状確認から。

まず、簡単に「移民」と口にするけど、定義をよくわからないまま使っていたのは私だけではないはず。

移民とは、本書によれば「居住国を離れ、居住国以外の国に12ヶ月以上住む人」

だから、永住する人や長期間暮らす人だけでなく、留学生も「移民」に含まれる。

そして現在の政府は高度人材や留学生を積極的に受け入れる方針でいるということなので、実はもう日本は既に移民政策を進めていたのだ。

実際、昨年末時点で日本に住む外国人の数は238万人と過去最高を記録している。

人口の2%が外国人。

思ったよりずっと多い。

移民がどうなのかと考えるよりも先に、既にどんどん人が外から入ってきていたらしい。

 

 

● 移民受け入れ反論への反論

移民を受け入れることのメリットは読むまでもなくだいたい想像がつくと思う。

人口減に歯止めがかかり、若い人材が集まることで社会に活力が生まれ、異文化が入ってくることで新しい価値観をもたらしてくれる。

こんなところ。

あとは、デメリットをどう考えるべきなのか。

本書の2章「移民は『タブー』となぜ思うのか」で、具体的な反対意見を6つ挙げ、それぞれに返答をしている。

こんな具合に。

 

 

Q.外国人犯罪が増えるはほんとうか?

A.外国人が右肩上がりで増えているにも関わらず、外国人の犯罪はここ10年で4万7千件→1万4千件と急激に減っている。

 「日本はむしろ世界の中でも外国人との共生の成功例がきわめて多い国」なのだ。

 

 

Q.日本人の労働力を活用すべき?

A.日本人だけでは人手不足

 

 

Q.日本人の職が奪われる?

A.人手不足だから仕事は奪われない。

 給料が下がる心配もいらない。

 むしろ、移民が入ることで他の被雇用者の賃金が上昇するというデータがある。

 移民は自国の低賃金労働者と競合するより、むしろ補完し合う関係になることが多い。

 例えば日本人があまり就きたがらない介護に就いたり、日本人以上に伝統工芸・伝統文化に惹かれる外国人が文化の継承者として仕事に就くこともある。

 また、移民が入ってくると、自国民は高度な言語能力を必要とする仕事や、付加価値の高い仕事に移る傾向がある。その結果、新たな仕事が創り出され、賃金も上昇していく。

 

 

Q.社会保障費が増える?

A.生活保護を受けず仕事に就けるように、語学教育をしっかり行わないといけない。

 

 

Q.人口減でも豊かな国は可能?

A.スイス、ベルギー、スウェーデンといった、人口の少ない豊かな国はみな移民を受け入れている

 

 

Q.生産性が上昇すれば大丈夫?

A.平均年齢が上がり続けるような国で斬新なイノベーションなんて起こるのか?

 

 

 

 

● 受け入れないと大変なことに……

さらに次の章では、ヨーロッパが現在なぜ移民問題に手こずっているかを検証して、日本と比較を行っている。

ヨーロッパの場合、やっぱりキリストvsイスラムという構図がある。

その点、日本はキリスト教徒ではないし、日本に移住しそうなイスラム教徒は穏健で親日的な東南アジアの人たちなので、心配はいらない。

また、ヨーロッパの場合は移民の文化や言語をあまりにも尊重しすぎたため、移民が国になじまず自分たちだけのコミュニティを作り、現地の人たちとうまくやれなかった。

だから日本が受け入れる際は語学教育をきっちりと行う必要がある。

そしてもう一つ、ヨーロッパの移民問題が根深くなった理由として、次のことを挙げている。

 

 

観光ビザで入国したEU以外からの外国人が欧州に定住したことである。人手不足に陥った欧州では外国人観光客が帰国せず、ヨーロッパ内に仕事を見つけて非合法に働くという状況が発生した。

この状況は今の日本と、きわめて似通っているのではないだろうか。日本は深刻な人手不足に陥る一方で、外国人観光客に対しては「爆買い」期待で急速に門戸を広げた。政府は2020年には4千万人の外国人観光客の受け入れを目指すとしているが、人手不足が深刻な状況では、外国人の不法残留が増加する可能性も無視できない。

 

 

これ、ちょっとまずいよね。

別の章でも、不法に日本で働く外国人が増えていることを説明している。

ここ三年、不法残留者数が増え続けている。

技能実習生(先進国の技術を学ぶという名目で新興国から連れてくるが、実態はただの安い労働力)の失踪も増えている。

そして、こう述べている。

 

 

継続する人口減少と人手不足の中で、正規の外国人受け入れ制度がなければ、日本が望まない外国人が日増しに増えていく。移民政策の反対派は移民政策がなければ日本には移民が入ってこないと思っている。しかし、現実には逆のことが起こっている。日本が必要な人材を正規のルートで受け入れる仕組みとしての「移民政策」を作ることが、将来の深刻な「移民問題」の回避につながるのである。

 

正規の移民を拒んで人手不足が続けば、国に隠れて住み着く外国人が多くなる。

そうなると当然、給料も安いだろうし人とのつながりも希薄だしろくな社会保障も受けられないだろうから、犯罪に手を出す可能性も高くなる。

外国人が増えると治安が悪くなる、と考えて移民を拒むこと自体が、外国人の犯罪を増やすという予言の自己成就的な状況になるということか。

だったら最初から外国人を今よりもたくさん受け入れて、ちゃんと働いてもらって、消費活動もしてもらって、税金も社会保険料も払ってもらった方が日本のためになりそう。

 

 

● 本書を読んで考えたこと

数日前の記事で、「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」という新書を取り上げた。

 

sinsyo.hatenadiary.jp

 

実はその中では、人口減少対策として移民を受け入れることは、国を危機にさらす行為だとしてきっぱりと否定していたのだ。
「未来の年表」を読んで「なるほど移民に頼るのは安易かもしれないな」と思っていたところで、正反対の主張を掲げる本書を見つけたので、今回興味を持って手に取ってみた。
さて、どちらの本が正しいのか。
移民は受け入れるべきなのか、拒むべきなのか。
次回の記事で改めて考えてみたい。

というわけで、この話、もう少し続けます。

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