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移民を受け入れるべきかどうか「限界国家」「未来の年表」を読み比べて考えた

 

限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択 (朝日新書)

限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択 (朝日新書)

 

 

 

 

● 「限界国家」VS「未来の年表」

どちらも6月の新刊で、どちらも日本の人口減少を危惧する内容になっている。

大きく違うのが、移民に対するスタンスだ。

「未来の年表」では移民を受け入れることの危険性を説いているのに対して、「限界国家」は移民を受け入れることの重要性を一冊まるごと使って訴えてくる。

早速それぞれの言い分を、改めて確かめてみよう。

 

 

 

この二冊の書評記事はこちら。

 

sinsyo.hatenadiary.jp

sinsyo.hatenadiary.jp

 

 

 

● 「未来の年表」の意見

移民政策に関する著者の主張を引用してみる。

 

 

 

多くの国民が不安を感じる治安の悪化だ。大規模に受け入れたヨーロッパ諸国ではテロや暴動、排斥運動が起こるなど混乱をきたしている。

(中略)他方、伝統や文化の変質も避けられない。天皇への経緯や地域に伝わる祭り・伝統行事の継承への不安を口にする人は少なくない。これまでも、ゴミ出しルールを守らないとか、騒音といった地域のトラブルが問題となってきたが、毎年大量の外国人がやってきた場合、こうした問題の深刻さは想像以上だろう。 

 

日本人が激減する中で大規模に受け入れた場合の長期的な影響も考慮しなければならない。

内閣府が2014ねんに移民受け入れのシミュレーションを行った。2015年から毎年20万人ずつ受け入れ、2030年以降の出生率が2.07に回復すれば、2060年の人口は1億989万人、2110年には1億1404万人となり、ほぼ1億1000万人水準を維持できるとの結論であった。だが「毎年20万人」となれば、50年で1000万人、100年では2000万人である。資産通り1億1000万人規模の総人口を維持できたとしても、2060年時点で10人に1人、2110年には5人に1人が移民という計算になる。 

(中略)

人口減少下で移民を大規模に受け入れる政策は、人口規模を維持することと引き替えに、日本人が少数派になることを許すものだと認識すべきである。「国のかたち」は変容し、われわれが認識する日本とは全く違う「別の国家」となるだろう。

 

 

 

価値観の移民が増え、一方の日本人が減っていくことで、日本が日本でなくなってしまう。まとめるとこんなところか。

 

 

 

●「限界国家」の意見

この問題に対して、「限界国家」はどう答えているか。

まず治安の悪化については、先日の記事にも書いたとおり、外国人が増える一方で検挙数が激減しているというデータを持ち出して明確に否定する。

伝統・文化の変質についても語っている。「日本はむしろ世界の中でも外国人との共生の成功事例がきわめて多い国」と述べた上で、変質どころか、外国人が日本の伝統・文化を引き継いでくれることを期待している。

人口水準を維持するために毎年20万人受け入れ続けると日本人が少数派になる、という『未来の年表」の主張についてはどうだろうか。

移民受け入れのペースについて、「限界国家」では次のように考えている。

 

 

 

現時点での外国人数と総人口に占める割合は238万人、人口の1.9%である。いまから約20年後の2035年の目標として4%を設定してはどうだろうか。現在の東京23区に住む外国人の割合は4.4%である。東京には外国人は多いが、だからといって住民同士の間で大きな問題は起こっていない。18年後の全国平均が、現在の東京23区の受け入れ割合に近い4%となることを目指すのである。

具体的に、どのぐらいの数の外国人を受け入れることになるのか? 2035年に推定されている日本の人口は1億1千万人である。その数字をそのまま使うと、4%は440万人となる。現在より約200万人の増加となり、年間にすれば平均25万人程度の受け入れとなる。 

これを達成するために最初から25万人を新たに受け入れるのではなく、先述の通り当初は年間数万人を新たな枠組みで受け入れる制度を作り、その受け入れの経験を踏まえて徐々に増やしていくことになるだろう。現在、すでに毎年15万人のペースで増加しているが、新たに10万人程度を受け入れることになる。

 

 

 

 

 

「未来の年表」で紹介された内閣府の試算が「年20万人」の受け入れに対し、「限界国家」は「年25万」。

だけど、受け入れるペースを徐々に上げていこう、という主張をしている。

そうすると、逆に移民が増えすぎるようであれば、徐々にペースを落としていけばいい、と著者なら主張するかもしれない。

 

 

(ところで、現在年間15万人ずつ増えているのを、もう10万人増やして年間25万人。

25万人 × 18年 =450万人

という計算式なんだと思うのだけれど、既に日本にいる外国人238万人を会わせたら約700万人、人口の6%にならない?

何か私の考え違いがあるんだろうか。

あるんだろうとは思うんだけどよくわからない。)

 

 

●比較してどう考えるか?

プロフィールによると、「限界国家」の著者は「外国人定住政策の専門家」で(「未来の年表」の著者は「人口政策・社会保障政策の専門家」)、移民受け入れの方法についてかなり詳しく書かれている。だから、移民に関しての記述はどうしても「限界国家」に説得力を感じてしまう。

「日本は島国で排他的だから移民との共生は難しい」と以前は思っていた。

今回2冊を読み比べて、「移民はマイナスではなく、日本が活性化するいい機会なんじゃないか」と考えるようになった。

単純に頭数が増えるだけじゃなくて、違う文化が入り込んでくることでもっと刺激的な国になるかもしれないし、逆に日本に魅力を感じる外国人が移住することで、日本人と外国人が一緒になって伝統や文化が受け継がれていくこともある。

もちろん、外国人が増えることで国の形が変わっていくこと派あると思う。

だけど、古代の日本は、朝鮮半島から渡来人が訪れたり、中国に渡ったりして先進的な文化を取り入れた。

明治以降は欧米の文化を取り入れて西洋化を果たした。

常に外国からの影響を受けることによって国を発展させて、新しい文化を生み出してきた。

だから移民の存在によって国が変わっていくことに過度な危機感を覚えなくてもいいんじゃないだろうか。

 

 

 

●そもそもの問いの立て方が違っていた

この記事を書きながら気がついたことがある。

引用したとおり、既に現在、毎年15万人のペースで外国人が増えてきている。

議論するまでもなく、「移民」は既に増えてきているのだ。

移民は「アリ」か「ナシ」か。

この0か100かの単純な二択で考えることがそもそも間違っていた。

そうじゃなくて、「どの程度受け入れるのがいいのか」「どんなメリット・デメリットがあるのか」「メリットをどう生かし、デメリットにどう対処するか」という観点で考えなければいけなかった。

 

 

 

●移民で人口問題は全部解決するの?

ただ、疑問もまだ残っている。

「限界国家」で、2035年までに外国人をもう200万人増やす、という目標を語っていた。

ただ、それまでに日本の人口は1800万人近く減る計算になっている。

全然足りないじゃん。

それに、これは私がよく知らないだけかもしれないけれど、移民をもっと受け入れよう、と決めたところで、そう都合よく外国人ってきてくれるものなのだろうか。

今はまだいいかもしれないけれど、今後少子高齢化が進んで国が勢いをなくし、給料は安いのに税金や社会保険料ばかり取られ、石を投げれば老人に当たるような国にわざわざ移り住んでくれるのだろうか。

私の今のところの結論は「移民政策は積極的に行うべき。だけどそれだけでは、人口問題の解決までには至らない」である。

実はもう一冊、人口減に関する本を読んだ。

次の記事では、その本について取り上げたい。

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