SHIGOIGA委員会

仕事<趣味の30代男性。本の話題を中心に、書きたいことを自由に書いていきます。

同じテーマの本を三冊読むことで、自分の考えを深めることができる

前回までの記事で、人口減少という問題について、三冊の新書を読み比べることで自分の考えを深めることができた。
これはたまたま六月の新刊に人口減をテーマとした新書が複数あったのがきっかけで、最初からこのような読み方を意図していたわけではまったくない。
でも、我ながらいい読み方をしたなと思っている。
一つの問題における複数の視点を知ることで、人口減少という問題を多角的に考えることができた。
三冊、というのがちょうどよかった。
二冊だと、○か×かの二項対立になりがちだけど、もう一冊違う角度から切り込んだ本を選ぶことで、より立体的に捉えることができる。

 

新書を複数冊読むという作業をしている最中で、そういえば、同じテーマの新書を三冊読もう、という主張をした本があったことを思い出した。
それがこれ。

 

 

 

新書3冊でできる「自分の考え」のつくり方 (青春新書PLAY BOOKS)

新書3冊でできる「自分の考え」のつくり方 (青春新書PLAY BOOKS)

 

 

 

私が読んだのは単行本版「だから、新書を読みなさい」だった。
新書を読め、というタイトルの本を単行本で出すとはどういうことだ、と文句を言いたかったのだけど、その後改稿して新書版を出していたらしい。
新書版のタイトルは、「新書を三冊読んで考えを深めよう」というメッセージがより明確になっている。

 

 

●新書の読み方のコツ

新書を三冊読んで考える手順はこうだ。
まず、Amazon等を利用して自分の関心のあるテーマについて書かれた新書リストを作る。
その中から三冊、「ロングセラー(=その分野の定番書)」「最近の本(=現在の空気の中で書かれている本)」「一番やさしい本(他二冊が難しかった場合の保険)」に該当する新書を選ぶ。
この三冊は、違う立場の視点から書かれた本でなければいけない。
同じ著者やレーベル、似たような主張を読むのを避け、考え方が相違・対立する三冊を選ぶ。
選んだら、読む(当たり前か)。
ここからは、読み終えた後に行う作業だ。
まず、ステップ1「本にキャラ付けする」。
例えばそれぞれの本がどんな情報を土台にしているか、著者の職業・性別・世代を確認して、三冊の立場の違いを確認する。
次にステップ2「本のメッセージを聞く」。
それぞれの本が一番伝えたいことは何なのかをはっきりさせる。
それから、ステップ3「本に質問を投げかける」。
例えば、自分の抱いていた疑問について、三冊の本はどう答えているかを調べて比較する。
あるいは、一冊目を読んでいて気になった箇所について、他の二冊ではどう書かれているかをチェックする。
そして、ステップ4「頭の中の『棚卸し』」。
自分の考えを作り上げる前段階として、本を脇に置いて、自分の頭の中にあることをすべて書き出してみる。
最後に、ステップ5「『自分の考え』を練り上げる」。
ステップ1~4の材料を生かして、自分の考えを作り上げていく。
簡単にまとめるとこんな感じだ。

 

 

●私は実際にどう読んだのか

私が実際に今回の三冊「未来の年表」(以下「年表」)「限界国家」(以下「限界」)「武器としての人口減社会」(以下「武器」)をどう読み比べていったかを、上で説明した本の読み方と比べながら振り返ってみる。

まず、三冊の選び方について。
「新書3冊でできる『自分の考え』の作り方」(以下「作り方」)では、「ロングセラー」「最近の本」「やさしい本」を選べとあった。
だけど私が実際に読んだ3冊は、二冊が6月の新刊、もう一冊も昨年発売された本だった。
amazonで「人口減 新書」で検索したところ、10年以上前に書かれた新書がいくつかあったので、それを読んでみるのもよかったのかもしれない。
ただ、もう一つの条件「違う立場の視点から書かれた本」を三冊選ぶことについては上手くいった。
「年表」は人口減少で起こる弊害を年表という形で具体的に書いた本。
「限界」は人口減の対策として移民を推奨する本。
「武器」は人口減が逆に経済を発展させることになると主張する本。
人口減について網羅的に書いた本に、「移民」という案に絞って具体的な解決策を示した本に、人口減は危機ではなく武器だというまったく違う視点で書かれた本。
しかも「限界」で提示した移民という策は「年表」ではきっぱりと否定されている。
「年表」と「限界」が対立状態にあって、そこに「武器」が別角度から切り込んでくる。
上手い具合に三人の著者の主張がばらけている。

 


そして、読み終えた後に行う作業、ステップ1~5はどうか。
まず、ステップ1「本にキャラ付けする」。
私は著者の経歴に注目した。
「年表」は男性の大学教授、「限界」は男性で、外国人定住政策の専門家。
そして「武器」は女性、子どもを三人育てながら国連ゴールドマン・サックスで働き、今はOECDのセンター長を務めている。
経歴でも、「武器」の異色ぶりが際立つ。
さらに、「年表」の著者は「産経新聞」の論説委員も務めている一方、「限界」の出版社は「朝日」新聞出版。
「産経」と「朝日」の対立に呼応するかのように、この二冊は「移民」に対するスタンスが真っ向から対立している。
三冊の著書の関係性と三人の著者の関係性が面白いくらい呼応していた。

 


ステップ2「本のメッセージを聞く」。
これはいつも当たり前に行っていること。
だけど同じテーマの本を三冊読み、しかも三冊の主張がそれぞれ全然違うので、よりメッセージが明確に頭に残ることになった感じはある。

 

そしてステップ3の「本に質問する」。
ここを上手くこなすことが、「作り方」で紹介する新書の読み方を上手く実践するコツだと感じた。
実際、私は本同士、著者同士を対決させるような気持ちで三冊を読み比べていた。
例えば「限界」を読んでいるときは、「あんたは移民移民とうるさいけどさ、『年表』では移民が増えることで国の形が壊れると言ってますよ?」と心の中で著者に突っ込みを入れていた。
そうしたら「限界」は「そんなことはない、移民が日本の生活に馴染んでいく例がこれだけある! 今から説明するから黙って聞いてろ!」とつばを飛ばして様々な実例を用意して懸命に反論してきた。
また、「武器」に対しては「『限界』の奴は高齢化が進む国でイノベーションなんて起こるわけないって決めつけてましたよ?」と煽ってみる。
そうすると「武器」は「違う、日本はまだ持てる力の全てを発揮していないんだ!」と机を叩き、次から次へとデータを持ち出しては私を納得させようとしてきた。
よく、本を読むときは内容を鵜呑みにせず批判的に読め、とアドバイスする人がいる。
それは正しいことなのだけど、実践するのは意外と難しい。
批判するためにはある程度の知性と、違和感をキャッチするための集中力が必要になるからだ。
だからちょっと気を抜くとついつい無意識のうちに本の内容を鵜呑みにしてしまう。
これだと読む前に比べて知識は増えるけれど、物事を多角的に考えることには繋がっていかない。
だけど、今回の作業を通して気がついた。
自分で批判するのが難しいなら、代わりに他の本に批判してもらえばいいのだ。
前に読んだ本の記憶が残っているから、突っ込みセンサーが簡単に発動してくれる。
これは、著者同士の討論番組を見るような感覚だ。
しかも討論番組と違って常に理知的に振る舞ってくれるから、レベルの高い議論の応酬を楽しむことができる。

 


ステップ4「頭の中の棚卸し」について。
この箇所に値する作業はちゃんとはやらなかった。
一応読みながら考えたことを本の余白にメモする程度のことはしたけれど、もっと本格的に行うことで、自分の考えをさらに深めていくことができたかもしれない。
これは今後の課題だ。

 

ステップ5「自分の考えを練り上げる」は、記事にすることで考えを確立することができた。

 

とまあ、こんな感じだ。
3冊の新書を読み比べ、本同士を対決させ、そこから見えてきた物を通して自分の考えを確立させていく。
この読み方は楽しかったし、自分の身にもなった。
このブログは、基本的には新刊を読んで記事にすることが多くなると思うけれど、同じテーマでの読み比べもこれからはたくさん行っていきたい。

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