SHIGOIGA委員会

仕事<趣味の30代男性。本の話題を中心に、書きたいことを自由に書いていきます。

トランプは「イデオロギーなきビジネスマン」だ 「世界を動かす巨人たち<経済人編>」(集英社新書)池上彰 著

 

世界を動かす巨人たち <経済人編> (集英社新書)

世界を動かす巨人たち <経済人編> (集英社新書)

 

 

 

以前、同タイトルの政治家編が出版されたが、本作はその続編。

 前作はこちら。

 

 

ジャック・マー(アリババ)

ウォーレン・バフェット(大投資家)

ビル・ゲイツ(マイクロソフト)

ルパート・マードック(メディア王)

ジェフ・ベゾス(アマゾン)

ドナルド・トランプ(不動産王、米国大統領)

マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック)

ラリー・ペイジ&セルゲイ・ブリン(グーグル)

チャールズ・コーク&デビッド・コーク(ティーパーティー運動の黒幕)

 

現代の世界を大きく変えたビジネスマン11名を、どんな子ども時代を過ごし、どんな事業を興し、それがどう世の中を変えてきたのか、一人当たり30ページ程度でわかりやすく説明してくれる。

 

 

● ドナルド・トランプ

いずれも興味深い人たちばかりだけど、やはり注目すべき存在はこの人。

アメリカ大統領の、ドナルド・トランプ

政治家になったトランプをあえて経済人編に入れた理由として、著者はこの人の本質を「イデオロギーなきビジネスマン」とみなし、大統領になってからもこのスタンスを貫いているからと説明している。

実際、本書で紹介されている彼の行動を見ると、事業を成功させるためならどんな方法も利用している。

例えば、有名になった「トランプタワー」を建てる際、金持ちに売るために、イギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃が購入を検討しているという噂を流した。

また、トランプタワーを本人は68階建てと称しているが、実際には58階しかないらしい。

ホテルの再開発の際は、順調に計画が進まないにもかかわらず、世間・自治体・ホテルを所有する会社にはすべてが上手く運んでいるように嘘の説明をしていた。

イデオロギーというより、倫理がない。

なるほど、事業家時代のトランプを知ることで、大統領になってからの行動様式がよくわかる。

平然と嘘をつき、自分に有利な噂を流す。

中国との貿易が赤字なので対中批判はするけれど、人権問題や南シナ海問題には感心がない。

台湾に接触を図ったのも、単に中国に対抗したいから。

ある意味、とてもわかりやすい人なのかも。

 

 

● ルパート・マードック

イデオロギーよりビジネス優先、と評されている人がもう一人。

メディア王のルパート・マードック

どこかで聞いた名前だなと思っていたけど、数年前、経営するメディア局が大規模な盗聴を長年行っていたとして議会で糾弾された人だった。

マードックは、故郷のオーストラリアから始まって、イギリス、アメリカに進出し、買収した新聞・雑誌・TVを大衆化・政権寄りの内容に変えることで成功を収めてきた。

アメリカではニュースチャンネル「FOXニュース」を経営している。

9.11のときはに他局が「アメリカ軍」と表現するところを「我が軍」と発言するなど、愛国心を煽る報道で視聴率トップを実現させた。

トランプが大統領になるまでは批判的だったものの、就任後はトランプ寄りの報道をして、今は彼のお気に入りの報道局になっている。

 

 

● コーク兄弟

そんなトランプでも逆らえない人がいた。

それが、石油精製会社を経営するコーク兄弟。

この人、まったく知らない名前だった。

株式市場に上場せず、自由に経済活動が行えるように金を使って政治や世論を動かすことで、目立たないながらも影響力を与えてきたらしい。

例えば、自由主義者の知識人、シンクタンク、大学に資金を提供して、彼らに自分の考えを代弁してもらう。

共和党にも大量の献金をして、昨年の大統領選の際には日本円で1000億円を投入すると発言した。

オバマ大統領が医療保険制度改革オバマケア)を目指した際は、反対するための「ティーパーティー運動」に秘密で資金提供をすることで大規模な草の根運動に見せかけ、自分たちの意をくんだ候補者を下院にたくさん送り込んだ。

トランプがオバマケアをよりよいものに改革しようとしたのを見て、自分の息のかかった議員団に反対させ、改革案を断念に追い込む。

就任直後のトランプに、石油産業にとって邪魔な環境規制を次々と解除させた(パリ協定離脱もここに繋がるのかな?)。

とまあ、こんな感じで、金を使って暗躍することで、世の中を自分の都合の良いようにコントロールしている。

 

いまやコーク兄弟をはじめとする資産家は、アメリカの世論すら「買い取った」のです。 

 

ごく一部の大資本家の都合で、世界中の人々が影響を受ける。

本当に世の中を動かすのは、政治家ではなくて、政治家を選ぶ市民でもなくて、政治家や市民を意識的・無意識的に動かそうとする大資本家だった。

資本主義社会のどうしようもない現実を見せつけられたような気持ちにさせられた。


書評・レビューランキング