SHIGOIGA委員会

仕事<趣味の30代男性。本の話題を中心に、書きたいことを自由に書いていきます。

トーハク「興福寺中金堂再建記念特別展 運慶」に行ってきた

 上野の東京国立博物館で開催中の「興福寺中金堂再建記念特別展 運慶」を見てきました。

 

unkei2017.jp


「運慶」ってどんな人?

 

東大寺金剛力士立像(Wikipedia

 

 有名な東大寺南大門の金剛力士像。この作品を手がけたのが運慶です。

 運慶は平安時代末期~鎌倉時代初期、ちょうど貴族から武士の時代に変わった時代にに活躍した仏師です。
 運慶や、父の康慶は「奈良仏師」と呼ばれる、奈良を拠点をして活躍する一派に属していました。当時の政治の中心が京都だったこと、また、運慶たちが彫りが深く迫力のある仏像を得意としていたのに対して貴族は優美で穏やかな仏像を求めていたことから、奈良仏師は活躍の機会をつかめずにいました。
 そんな中、1180年代に二つのチャンスが訪れます。
 一つは、藤原氏と対立する平氏が、藤原の氏寺である奈良の興福寺を全焼させ、近くの東大寺も大半が焼失してしまったこと。
 消失した仏像を再度作り直すため、運慶たちに活躍の場が与えられました。
 もう一つは、武家社会となり、鎌倉幕府から仏像制作の依頼が入ったこと。
 武士たちは貴族と違い、運慶の作る実在感のある力強い仏像を求めました。
 運慶は東と西、それぞれに拠点を置いて仲間の快慶や六人の息子たちと数々の名作を手がけました。

 

展覧会の内容


 運慶を中心に、父の康慶、六人の息子たち(いわゆる慶派)の仏像が展示されています。土曜日に行った際にはかなりの混雑具合でしたが、会場中央に置かれて360度どこからでも鑑賞できることもあったためか、絵画の展覧会に比べると比較的スムーズに見ることができました。
 仏像以外の展示はほとんどありません。とにかく迫力ある仏像のオンパレード。フロアー内に巨大な仏像が並ぶ様は壮観の一言でした。

 

注目すべき作品


無著・世親菩薩立像(Wikipedia


 展示作品の中からお気に入りを一作だけ選べと言われたら、迷わずこの像を選びます。
 無著・世親はインドに実在していたとされる兄弟僧で、普段は興福寺の北円堂というところに揃って安置されている像で、いずれも国宝に指定されています。

 いずれも、内面の深い精神性がそのまま表情になって現れたような顔立ちをしていて、一度像の前に立つとしばらくその場を動けなくなりました。他の仏像なんてどうでもいいから、ずっとこの像と対峙していたい、という気持ちにさせられます。

 二体とも、正面から見ると涙を浮かべているように見えるんですよね。

 運慶作品の瞳は、「玉眼」と呼ばれる技法を使っていました。湾曲させた水晶をはめこむことで本物の眼球のように見せるのです。

 光の当たり方なのか、表情のせいなのかわかりませんが、二体とも溢れる涙をぐっとこらえているように見え、それが一層この仏像の尊さを強調しています。

 

 運慶の師匠であり父でもある康慶の作品。

 四天王といって、メインとなる仏像の四方に立って仏教世界を守る役割を果たしています。

 注目すべきは、像が踏んでいる「邪鬼」の苦悶の表情!

 この顔がたまらなく好き。

 ユーモラスで楽しいというのに加えて、邪鬼が苦しげな顔をすることによって、踏んづけている四天王の強さが際立ってくる効果があります。

 斬られ役の演技によって、主役の強さを引き立たせるという時代劇と一緒ですかね。

 

 

図録が凄い

 展覧会に行ったときは、必ず図録を買って帰ります。

 だけど今回は迷いました。仏像の写真が入った本は既に家に数冊あるので。

 しかも値段が高かった。通常は2,500円程度が相場なのに対し、今回は3,000円。

 それでも結局買ってしまいました。

 今回、出品点数が少なかったこともあり、図録では同じ仏像を角度・距離を変えて何枚も掲載していました。

 特に、僕が今回最も感動した無著世親立像が、何と14ページにわたって掲載されていたのです。

 全体像、横顔、アップの顔、斜めからの表情に後ろ姿に着物の裾のアップまで……。

 これは買わずにはいられませんでした。家に帰ってから、舐めるように味わい尽くしています。

 最後に、展覧会に行く前にはなるべく予習をしておくようにしているのですが、今回運慶展に行く前に読んだ本を紹介します。

 

運慶への招待

運慶への招待

 

  展覧会に会わせて、運慶の関連本が山のように出ているのですが、僕はこの本を選びました。

 本のサイズが大きい(ムックくらい)ので写真に迫力があること、説明文が多すぎず、要点がコンパクトにまとめられているので運慶の生涯・作品の特徴・時代背景がすぐに頭に入ってくるところがポイントです。